平成25年度 国際審判員 海外派遣報告書

1 派遣事業名 第27回 ユニバーシアード

2 派遣期日 平成25年7月5日~7月18日

3 報告者名 有澤重行(山口県)松本 究(佐賀県)

4 派遣先 ロシア カザン

5 大会概要 および 大会結果
 ・大会名称 27th Summer Universiade Kazan 2013
 ・大会期間 7月6日~7月16日
 ・大会内容
・会場    :Basket Hall(Main Hall,Second Hall),Miras Sports Complex,Olymp Sport Hall,Biek Tau Sports Complex
 ・参加チーム:
  ○男子
ロシア、ドイツ、ウクライナ、韓国、エストニア、オマーン、セルビア、ルーマニア、日本、メキシコ、フィリピン、モンゴル、カナダ、チェコ、オーストラリア、アラブ首長国連邦、スウェーデン、リトアニア、フィンランド、ブラジル、中国、チリ、ノルウェー
  ○女子
ロシア、スウェーデン、ポルトガル、モンゴル、アメリカ、ブラジル、チェコ、マリ、台湾、カナダ、日本、ウクライナ 、オーストラリア、フィンランド、中国、ハンガリー
 ・競技方法 :男女とも予選リーグを行った後、順位決定戦を実施  ・大会結果(順位順)
  ○男子
ロシア、オーストラリア、セルビア、カナダ、リトアニア、ルーマニア、エストニア、ブラジル、アメリカ、フィンランド、メキシコ、ドイツ、ノルウェー、韓国、チェコ、モンゴル、スウェーデン、日本、ウクライナ、アラブ、チリ、中国、23,24位はなし
  ○女子
アメリカ、ロシア、オーストラリア、台湾、スウェーデン、チェコ、ハンガリー、カナダ、ウクライナ、中国、ポーランドブラジル、日本、フィンランド、マリ、モンゴル

6 大会参加審判員ならびにコミッティー

No Name(Mr/s.) Natio. Age F/D No Name(Mr/s.) Natio. Age F/D
1 Fabio KOVER BRA 41 F 21 Vaciav LUKES CZE 48 F
2 Karia DINIZ BRA 37 F 22 Robert PAULIK CZE 49 F
3 Reid Allen KENYON CAN 42 F 23 Timo SUSLOV EST 32 F
4 Karen LASUIK CAN 47 F 24 Henri HILKE FIN 39 F
5 Rodrigo Miguel OLIVEROS HENRIQUEZ CHI 40 F 25 Johannes SAREKOSKI FIN 38 F
6 Jose Juan AYALA PEREZ MEX 42 F 26 Boriss Schmid GER 50 F
7 Gina Denise CROSS USA 40 F 27 Pal GYORFFY  HUN 38 F
8 Thomas James SHORT USA 30 F 28 Mindaugas VECERSKIS LTU 39 F
9 Zebo WANG CHN 33 F 29 Jakub ZAMOJSKI POL 36 F
10 Zhiwei WU CHN 32 F 30 Torkild RODSAND NOR 33 F
11 Shigeyuki ARISAWA JPN 36 F 31 Laszlo BUKRESTI ROU 36 F
12 Kihamu MATSUMOTO JPN 36 F 32 Ivana IVANOVIC SER 32 F
13 Ganzorig BATBAYAR MGL 29 F 33 Saulius RACYS SWE 29 F
14 Ahmed Darwish AL BULUSH OMA 38 F 34 Sergiy ZASHCHUK UKR 36 F
15 Hsiao-Lun TIEN TPE 37 F 35 Toni Le-Anne  CALDWELL  AUS 37 F
16 Vladimir OKHRIMENKO RUS 43 F 36 Timothy Johns MILLS AUS 43 F
17 Hussain Hassan A.ALBLOUSHI UAE 39 F 37 Sergey KREG RUS 43 F
18 Sergey BELIAKOV RUS 33 F 38 Semen OVINOV RUS 34 F
19 Sergey MIKHAYLOV RUS 36 F 39          
20 Evgeny VETROV RUS 32 F 40          

7 担当したGame(有澤)
No 期日 対戦カード  R/U 相手審判 ゲ ー ム  雑   感
1 7月7日 M/SRB-MOG U2 Schmidt(GER)
Cross(USA)
大会オープニング。モンゴル派遣のおかげで顔が売れてました。
セルビア圧倒。モンゴルのフィジカルと、戦闘意欲をセルビアが抑えつけました。モンゴルのストレスがインサイドの悪い手として出てきたので、意識して整理しようとゲーム中のタイムアウトで確認。
2 7月8日 W/RUS-MOG U2 Bukresti(ROM)
Short(USA)
女子地元の開幕戦。モンゴル派遣のおかげで顔が売れてました。
ロシア圧倒。ロシアのセンターは210cmはあったと思います。最終的に100点差となりました。
3 7月9日 割り当てなし      
4 7月10日 M/LTU-CHN U2 Kenyon(CAN)
Ovinov(RUS)
高さは互角でしたが、ファンダメンタルと戦術で徐々にリトアニアが離していく試合でした。アクティングした中国選手を、U1が時計が止まるまでずっと指をさしてウォーニングする気満々でした。ある意味コーチも観客もわかりやすかったように思います。
5 7月11日 M/CAN-CZE U2 Okhrimenko(RUS)
Rodsand(NOW)
序盤、チェコがリード。最終的にはカナダが逆転。3ピリにチェコのベンチがうるさくなったので、オフィシャルワーニングをしました。ですが主審がチェコのインサイドのフロッピングを一発でTF。退場する選手が暴言を吐いたらしくTF.と最終的には主審のコントロールでした。
6 7月12日 W/UKL-FIN U2 Ayala Peles(MEX)
Kover(BRA)
女子の9-16順位戦。体格に勝るウクライナがペースをつかみますが、悪い手を使うウクライナのオフェンスを意識して取り上げました。フロッピングが起きて時計が止まるまでかなりの時差がありましたがワーニングしてみました。
7 7月13日 割り当てなし      
8 7月14日 M/GER-MOL U2 Kover(BRA)
Vetrov(RUS)
男子9-16順位戦。予選で日本を破り勢いのあるモンゴル。前半は得点が離れずでしたが、ドイツのプレッシャーに終盤ミスが出て離されました。
9 7月15日 W/SWE-CZE U2 Mikhalov(RUS)
Pedief(UKR)
女子5・6位決定戦。前半スウェーデンが優勢でしたが、後半チェコが追いつき、ゲームがシビアに変化。
10 7月16日 M/USA-FIN U2 Paulik(CZE)
Pedief(UKR)
男子9・10位決定戦。フィンランドが突っぱねるも地力の差が出ました。USAが予選よりもチーム力が上がっているのがわかりました。

7 担当したGame(松本)
No 期日 対戦カード  R/U 相手審判 ゲ ー ム  雑   感
1 7月7日 M/GER-EST R  PAULIK(CZE)VETROV(RUS) 初の国際大会で、主審を担当することになり、さらに延長戦に突入することに。 ポストでのポジション争いをもっと吹いて整理する必要があった。フロッピングに対するWARNINGがとても速く、勉強になった。
2 7月8日 M/USA-CZE U1 SUSLOV(EST)
HILKE(FIN)
USAの選手はコーチからしっかりとコントロールされ、礼儀正しいプレイヤーばかりだった。ケースとしてそんなにはなかったが、手を使うディフェンスに対し、もう少し整理ができておけばよかった。
3 7月9日 M/GER-OMA U1 PAULIK(CZE)
HILKE(FIN)
ドイツの高さ、巧さに対して、低身長のオマーンはなかなか攻撃することができず、最終的に123-32の大差で、ドイツが圧勝。これだけ点差が離れると、集中力を切らさないようにと集中しながらの審判となった。
4 7月9日 W/USA-CZE U2 GYORFFY(HUN) SAREKOVSKI (FIN) 今大会初めての女子のゲーム。ゲームの最初から両チームとも気合いの入ったプレーを行った。できるだけ笛を吹くことなく、アドバンテージ、ディスアドバンテージを見極めながら3人で協力してゲームを運営していくことができたと思う。
5 7月10日 M/CZE-UAE R AYALA PEREZ(MEX)
 DINIZ(BRA)
今大会2回目のCC。CZEがチャージングを宣せられるケースが多く、UAEのフロッピングだというクレームをいうケースが多かった。速攻の場面、ショットのところでファウルをされたことに腹を立てたケースを発端に乱闘になり、Disqualifying Foulを宣するケースになり、2人退場することになった。
6 7月11日 割当無し      
7 7月12日 M/CHN-CHI U2 PEDIEV(UKR)
 BELIAKOV(RUS)
中国のアクティングに対して、U1がofficial warningを行い、次に同じようなことがあったら、すぐにtechnical foulをということだったので、対応がとても早いことにとても勉強になった。
8 7月13日 W/UKR-BRA U2 IVANOVIC(SER)
SHORT(USA) 
BRAの#10がフロッピングをするということをプレ・ゲーム・カンファレンスにおいて確認してゲームに入った。ゴール下のショットのケースを吹いてもらったケースが2本あったので、もっと自分が積極的に吹いてもよかったと思った。
9 7月14日 Quarter Final
M/RUS-ROU
U2 KENYON(CAN)
RACYS(SWE)
プレ・ゲーム・カンファレンスにおいて、一貫した基準を持って吹くこと、スローインをする前にアイコンタクトをすること、ゲームの最初の笛が大切であることを確認してゲームに入った。KENYONの一貫した判定をしようという思いが強く、本当にロングディスタンスコールで助けられた場面があった。
10 7月15日 Round 3 (9th -12th)
M/MEX-FIN
U1 MILLS(AUS)
H.ALBLOUSHI(UAE)
ゲームはメキシコのインサイドがファウルを取ってもらえないことにアピールがあり、さらにガード陣までイライラし始めた。結局フィンランドの3Pシュートが効果的に決まったこともあり、フィンランドが勝利した。相手レフェリーに助けられた感もあるが、結構軽いコンタクトや本当に当たったのかというものまで吹いていたので、どういう基準なのかが分かり辛いゲームだった。
11 7月16日 7th,8th Place
M/BRA-EST
U2  OVINOV(RUS)
 ZAPOLSKI(POL)
コンセントレイション、アイコンタクトをゲーム前のカンファレンスで確認してゲームに入った。シーソーゲームとなり、最終的にエストニアが67-63で勝利。OVINOVがリーダーシップを発揮して結構助けられた感がある。自分自身インサイドエリアの判定力を向上する必要がありと思われる。

8 審判会議・その他ミーティング等内容

 ■7月6日審判会議(大会前)
 ○各国の代表が戦う試合なので、体調を整え、試合に集中すること。国はもとより、大陸、性別、生活、文化が違う審判団がチームとしてゲームを進めていくので、プレゲームカンファレンスは丁寧に行うこと。また、クルーチーフがリーダーシップを発揮して、従事するゲームを終わらること。
 ○シャツの支給は無し。ドレスコードは審判で会場入りするときは正装で入ること。(実際は半そでスラックスでした)
 ○ゲームをコントロールすること。プレゲームカンファレンスでは判定基準や、ベンチとの信頼関係の保ち方についてディスカッションしてゲームに入ってほしい。お互いのエリアを尊重し、クルーを尊敬しあうこと。
 ○輸送についてはインフォメーションボードを適宜チェックすること。

 ■7月13日審判会議(大会期間中)
 ○後半戦に向けて今一度共通理解を行う。大会のレベルを認識し、三人がチームとして協力をすること。
 ○TOとのコミュニケーションをしっかりと。アイコンタクトが取れていないために試合運営に支障が出る(交代やタイムアウト、24秒ショットクロック) 
 ○フロッピング、アクティングの警告を共通理解すること。当該プレイヤーだけでなく、コーチ、ベンチにも伝えること。
 ○最初の判定が非常に大事である。ファーストコールで基準が出るので、プレカンファレンス通りの判定であるように。
 ○相手エリアをリスペクトすること。最終的には「誰が審判したかわからなかった」がいい審判である。(文責 有澤)

9 審判技術・判定基準等に関すること

 ○審判技術について 
  ・スリー・パーソンのマニュアルについては、何とかできたのではないかと思います。ただし、「リード・レフェリー」時のサイドを変えるための動くタイミングが悪く、他の2人のレフェリーが困惑するようなケースがあったのではないかと感じました。どのタイミングでサイドを変えるために動いたほうがいいのか、逆サイドであっても動くことなく判定していくべきなのかというリードの動きを今後高めなければなりません。(文責 松本)

 ○判定基準について
  ・海外のレフェリーはフロッピングに対するwarningが結構早いと感じました。フロッピングだけでなく、アクティングに対するwarningも同様です。この点がゲームコントロールをすることにつながっていると思います。
 ・速攻を阻止するようなファウル(ボールプレイではないようなケース)に対するアン・スポーツマンライク・ファウルは多くなかったような気がします。また、ベンチからのそのケースに対するアピールも多くなく、その点に関して私の中で違和感を感じました。
 ・ショット成功後のボールに触れるケースに対し、あまり警告等が行われなかったような気がします。ボールを保持し、審判に投げて渡すような行為もあり、delaying the gameには該当しないのかと感じることが多々ありました。(文責 松本)

10 全体の感想および提言等(チーム・選手・観客等も含む)

まずは派遣に際しまして、たくさんのご支援、ご配慮いただききましてありがとうございます。自分が日本で学んでいること、表現したいもの(ウォーニングやプレゼンテーション・気配り等を含むゲームコントロール)が世界でも実践されていることについて、日本の審判員であることに自信が持てます。これを日本のコート上で体現できるように努力したいと思います。また、なによりも正確な判定の積み重ねが信頼される審判員であるということを再確認できた大会でした。自分に置き換えて、自分もまだまだ判定力の向上を求めていかなくてはならないと痛感しています。メカニックや位置取り、目の当て方については違和感がなかったと実感しているんですが、プレイの流れやゲームにマッチした正確な判定力という点では、まだ物足りないのかなと感じています。今回のノミネートで気付いたことですが、自分は若手ではなく、中堅の年齢になっていることです。どのゲームでも主審ができるように日本でのゲームを大切にして、日本のバスケットボールの発展のために少しでも貢献できたらと思います。ありがとうございました。
(有澤)

今回、ユニバーシアードに派遣させて頂きまして、吉田委員長をはじめ、多くの方々へ本当に感謝申し上げます。特に国際グループの橋本グループ長には出発前からいろいろとアドバイスを頂き、さらに、いろいろな面でサポートして頂きました。本当にありがとうございました。今回、初めて海外に派遣させてもらい、ゲームを吹いたのですが、本当に初めてことばかりで終始緊張しっぱなしの状態だったような気がします。特に海外最初のゲームがいきなりの主審で、経験のあるパートナーを前に何を話せばいいのかよく分からないことから始まり、最終的に延長まで突入するような激しいゲームとなりましたが、何とか終了することができました。その翌日はUSAのゲームを吹きました。緊張で足が震えることよりも、なぜかUSAのゲームを吹いているという楽しさを感じながらのゲームでした。主審を務めた別のゲームでは、乱闘になり、ゲーム終了後にスコア・シートの裏にレポートを書くことも経験しました。また、地元RUSSIAのゲームで準々決勝、Rumania戦をメイン会場のメインコートで、それもTVオンエアーのゲームを吹かせて頂きました。地元RUSSIAのゲームではどの試合も会場が満員になるほど多くの観客が詰めかけ、バスケットボールに対する関心の高さを感じました。 今回、10試合も吹くことができたこの貴重な経験の中から感じることは、まだまだ自分の判定力、決断力は高くなく、それらを高めないといけないということです。海外のレフェリーの笛の早さ、official warningの早さ、フロッピングに対する意識の高さ、double foulの決断の早さなど本当に素晴らしい判定をしているレフェリーを間近で見ることができました。特に男子決勝を担当した3人のゲームコントロール力は素晴らしく、その点が一番自分に足りないものではないかと感じました。今回の経験を少しでも多くの方にお伝えし、還元することができればと思います。 大学生の世界大会ではありますが、世界の高さ、体格の大きさ、速さ、シュートの正確さを少しながら、感じることができました。このような力を持った世界各国に対し、日本はどのように戦っていくべきなのかということも試合を観戦しながら、考えました。明確な答えは出なかったのですが、このような強力な世界各国に対し、大学生代表のみならず、日本代表のどのカテゴリーにおいても、1つでも多く勝ち、良い結果を残すことができることを祈っております。
(松本)